蛇のようにうねり、一瞬でしなやかな弧を描く。手元で広がる木片の波は、まるで生き物のようだ。
「こきりこ節」の舞に欠かせないささら(編木・板ささら)は、長さ約17センチメートル、厚さ数ミリメートルのヒノキやスギの薄板108枚を麻紐で一筋に編み上げた特異な打楽器だ。108という数字は仏教における人間の煩悩の数を表すとも伝えられる。両端を両手で握り、アコーディオンのように開閉させながら擦り合わせることで、「ザッ、ザッ」という重厚かつ清冽な摩擦音を響かせる。
なぜ、これほどまでに耳へ突き刺さる澄んだ音が出るのか。音響工学の観点から見れば、板同士が擦れ合う際にごくわずかな時間差で連続衝突を起こし、高周波の倍音成分が極めて豊かに発生している。乾燥した合掌造りの家屋内で反響した際、人間の耳には自然の風の音や激しい雨音に近いホワイトノイズとして心地よく届く。工芸職人の勘と経験によってミリ単位で調整される板のしなり。簡素な見た目の裏に、計算し尽くされた古代の音響設計が潜んでいる。