日本のピザを見慣れた人が本場のショップを訪れると、その圧倒的な巨大さに言葉を失う。なぜアメリカのサイズはこれほど巨大なのか。理由はシンプルだ。切り売り(スライス)文化の定着と、「1ドルでどれだけ腹を満たせるか」という大衆の生活防衛から生まれた合理主義の産物だからである。薄く伸ばして表面積を広げることで、熱伝導を高めて短時間で焼き上げ、安価に提供する。この経済的合理性が、あの巨大な円盤を生み出した。
そして現在、アメリカのピザシーンにはこれまでにない地殻変動が起きている。長年親しまれてきたオイリーなジャンクフードからの脱却を目指し、72時間以上の長時間低温発酵させたサワードウ生地や、古代穀物を用いたクラストが人気を集める。トッピングにも地元産のオーガニック野菜やヴィーガン対応の植物性チーズ、さらにはハチミツに唐辛子を漬け込んだ「ホットハニー」を回しかけるクラフトスタイルが定着した。
大量生産のファストフードと、極限まで素材を突き詰めたアルチザンピザ。二極化が進む中で、アメリカのピザカルチャーは今まさに最高潮の豊かさを迎えている。