手に入れた大金の使い道には、時代ごとの芸人像が如実に反映されている。かつてのお笑い界では、賞金を手にしたその足で消費者金融へ駆け込み、積もりに積もった借金を一括返済するドラマが王道だった。苦楽を共にした母親に家をプレゼントした美談や、毎晩のように後輩たちを引き連れて歓楽街で豪遊し、わずか数ヶ月で賞金を使い果たしたという武勇伝も枚挙にいとまがない。
近年はその景色が一変した。計画的かつクレバーに資金を運用する新世代王者が増えている。YouTubeの自社スタジオ設立費用や舞台衣装の特注、単独ライブの演出強化など、自身のクリエイティブを拡張するための「事業投資」に賞金を充てる傾向が顕著だ。
劇場のチケットが数分で完売し、個人の発信力が問われる現在、賞金は一過性の贅沢のためではなく、自らのブランド価値をさらに高めるための原資として極めて合理的に活用されている。