バーコードをスキャンして商品を袋に詰めるだけの仕事なら、すでに機械のほうが圧倒的に正確で速い。店舗DXの波は、従来の販売員が担っていた定型業務をほぼ過去のものにした。では、いま店頭に立つ人間は何をしているのか。独自取材で見えてきたのは、「作業者」から「ブランドの演出家」「課題解決のカウンセラー」へと進化した現場の実態だ。
ある都心の複合商業施設では、スタッフの評価基準から「レジ処理件数」が完全に撤廃された。代わりに重視されているのは、顧客が店舗滞在中に感じた納得感や、言語化されていない潜在ニーズをどれだけ引き出せたかという対話力だ。客がスマートフォン片手に「この服に合うコーディネートを提案してほしい」と声をかけるとき、求められているのは在庫の有無ではない。客のライフスタイルや表情を瞬時に読み取り、文脈に応じた解決策を提示する直感的な判断力だ。
裏側のオペレーションも激変した。バックヤードでの棚卸しや発注業務はアルゴリズムが最適化し、スタッフの業務時間は顧客との対話やディスプレイの設計へと大胆にシフトしている。感情の機微を察知し、予期せぬトラブルに臨機応変に対応するスキルは、どれほど生成AIが発達しても代替できない。現場が渇望しているのは、マニュアルを忠実に実行する人間ではなく、マニュアルの外側で価値を生み出せる人間である。