視聴者の日常に自然と溶け込む日常演技から、一度見たら忘れられない狂気を秘めた怪演まで。かつては「ドラマによく出ているあの俳優さん」という親しみやすい認知だったものが、今や映画監督やプロデューサーの間で「矢柴さんに断られたら企画のトーンが変わってしまう」と言わしめるほどの存在へと変化を遂げた。
彼の強みは、登場した瞬間にその人物が歩んできた何十年もの人生の背景を匂わせる力だ。セリフのない一瞬の目線の動き、ネクタイを直す指先のわずかな震え。それらすべてが緻密に計算されつつも、生の人間としてそこに存在しているかのように見せる技術は、まさに職人技の域に達している。