大瀧詠一は、単なるシンガーソングライターではなかった。希代のサウンドプロデューサーであり、音響オタクでもあった。彼は、1960年代のアメリカン・ポップス、特にフィル・スペクターが確立した「ウォール・オブ・サウンド(音の壁)」を日本独自のポップスへと昇華させた。
『幸せな結末』のレコーディングには、膨大な時間と労力が注ぎ込まれている。ドラム、ベース、ギター、ピアノ、そしてストリングス。それぞれの楽器が複雑に絡み合いながらも、決してボーカルの邪魔をしない。この絶妙なバランスは、現代の効率性を重視したDTM(デスクトップミュージック)による音楽制作とは対極にある。手仕事の極みとも言えるその職人技が、耳の肥えた現代のリスナーを惹きつけてやまない。