伝統ある歌舞伎の世界において「梨園の妻」が担う役割は極めて重い。松竹株式会社が仕切る興行の現場、東京・歌舞伎座のロビーで贔屓筋に頭を下げる沙織さんの姿は、瞬く間に周囲の信頼を勝ち得ていった。出しゃばることなく、されど凛とした気品を崩さないその立ち居振る舞いは、厳しい伝統の場でも高く評価されている。
名門・萬屋の看板を守るプレッシャーは想像を絶する。しかし沙織さんは、伝統のしきたりを敬いつつも、家庭内には常に明るく風通しの良い空気を持ち込んだ。楽屋のケアから食事の徹底管理、さらには夫の健康面への細やかな配慮に至るまで、彼女の内助の功なくして現在の獅童の躍進はあり得なかった。