マッチングアプリの爆発的普及は、出会いのあり方を一変させた。Pairsをはじめとするデジタルツールの普及により、見知らぬ他者とつながるコストは歴史上最も低くなった。ブライダル・マッチング産業全体が活況を呈し、官公庁までもが婚活支援に乗り出す時代だ。しかし皮肉なことに、手軽な出会いのインフラが整えば整うほど、生涯のパートナーを見つけられない人々が溢れかえっている。
少子化問題や人口動態に詳しい天野馨南子氏(ニッセイ基礎研究所)は、出会いの場を増やすだけの施策や表面的な支援が孕む罠を繰り返し警告してきた。選択肢が無限にあるように錯覚するデジタル空間では、条件検索による過度な足切りが横行し、相互の減点方式によるマッチング不全が加速する。
アルゴリズムは似通った嗜好の人間を結びつけるが、泥臭い関係性の構築までは肩代わりしてくれない。ブライダル産業の現場でも、従来型の「お見合い」が持っていたお節介な仲介機能が失われ、自己責任による自由競争が過熱した結果、一部の人気会員にアプローチが集中して大多数が取り残される格差が日常化している。