「90パーセントは事実である」――自伝的戦記マンガ『総員玉砕せよ!』の巻末に著者が残したこの言葉は、作品が持つ重みを何よりも物語っている。物語の舞台となる聖ジョージ岬の支隊は、上層部からの無理難題と無謀な攻勢命令により、存在しない「全滅」を装うための無意味な突撃を命じられる。命を賭して生き延びた兵士たちが、面目を保ちたい上官の都合によって「死んだことにされる」という戦慄の展開だ。
水木がこの作品で徹底して描いたのは、英雄的な死など存在しないという冷徹な真実である。銃弾に倒れる兵士たちの最期の言葉は「天皇陛下万歳」ではなく、「お母さん」であり、「腹が減った」という切実な生の叫びだった。生きることへの執着を悪とし、自死を強制する組織の理不尽さ。作品に込められた強い怒りは、時代を超えて現代の組織論や倫理観にも重い課題を突きつけている。