歴史を遡れば、大正時代に起きた伝説的な惨劇三毛別羆事件が頭をよぎる。100年以上前、北海道の開拓村を恐怖の底に突き落としたあの事件でも、一度人間の味や肉を手に入れたクマが執拗に執着し、何度も人間を襲撃した記録が残っている。
野生動物行動学の知見によれば、ヒグマは本能的に自らが確保した食料を極めて強く防衛する性質を持つ。一度人間の遺体を食害対象として認識すると、その個体にとって人間は「脅威」ではなく「容易に獲得できるタンパク質源」へと認識が上書きされてしまうのだ。これが、遭遇時の致命的な連鎖を引き起こす最大の要因である。