アニメファンや視聴者に大きな衝撃を与えたのが、2005年春のメインキャスト一斉交代でした。『ドラえもん』が大山のぶ代、小原乃梨子、肝付兼太、たてかべ和也、そして野村道子という黄金のレギュラー陣から新世代キャストへとバトンタッチすることは当時大きなニュースとなりましたが、野村はほぼ同時期に『サザエさん』のワカメちゃん役からも自ら身を引きました。
この決断の背景には、野村道子ならではの「引き際の美学」と「次世代への配慮」がありました。ドラえもんのキャスト陣全員で揃って勇退するという節目を迎えた際、「国民的作品のキャラクターは、自分たちの年齢や都合で引っ張り続けるのではなく、エネルギーに満ちた若い世代に託すべきだ」という強い信念を抱いたことが理由とされています。
また、当時すでに夫である内海賢二氏とともに立ち上げた事務所「賢プロダクション」の運営が本格化しており、若手声優を育てる経営者・指導者としての責務に専念したいという思いも重なりました。名声にしがみつくことなく、最も輝かしいタイミングでバトンを渡した潔い決断は、業界内でも今なお深い敬意を集めています。