南海トラフ巨大地震において、大阪府沿岸に到達する津波の挙動は、太平洋に直接面した高知県や和歌山県とは大きく異なります。津波は紀伊水道と友ヶ島水道を通過し、大阪湾の奥へと回り込んでくるため、大阪港への第1波(潮位変化の始まり)の到達時間は地震発生から約1時間50分後、最大波が押し寄せるのは約2時間後と予測されています。
太平洋沿岸の「数分から数十分」という即時到達に比べると時間的猶予があるように見えますが、ここに油断が生じる最大の落とし穴があります。大阪府の想定における最大津波高は海抜約5.4メートル。これは満潮時の水位に巨大津波が重なる最悪ケースを前提とした数値です。
大阪湾は遠浅で閉鎖的な形状をしているため、一度進入した津波のエネルギーが減衰しにくく、長時間にわたって潮位が高い状態が続く特徴があります。激しい揺れによって沿岸部で地盤沈下や液状化が発生していれば、想定よりも早く海水が陸地へ溢れ出す危険性も否定できません。「到達まで2時間あるから大丈夫」という思い込みは捨て、揺れが収まった直後から行動を開始しなければ逃げ遅れるリスクに直面します。