過去に起きた凄惨な獣害事故の記録は、熊の生態と危険性を理解する上で重要な警告を発し続けています。
大正4年(1915年)に発生した三毛別羆事件の経緯は、巨大なヒグマが民家を次々と襲撃し、開拓民7名が命を落とした日本史上最悪の獣害です。この事件では、一度味をしめた獲物や奪った場所への執着、火や銃声を過度に恐れない個体の存在が記録され、熊の執拗さが浮き彫りとなりました。
また、1970年の福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件では、山頂付近で遭遇したヒグマに荷物を奪われた後、それを取り返そうとしたことが悲劇の発端となりました。熊は「一度手に入れた自分の所有物を人間が奪い返そうとした」と判断し、学生たちを執拗に追跡・襲撃して3名の命を奪いました。
さらに本州で起きた2016年の秋田鹿角熊襲撃事件(十和田山水掛水山周辺)では、タケノコ採りに入山した複数の男女が同一のツキノワグマに襲われ、遺体の一部が食害される事態となりました。通常は植物食中心のツキノワグマであっても、一度肉食に傾倒した個体は連続して人間を捕食対象にするという恐ろしい実態を世に知らしめました。