尾野真千子のキャリアを語る上で欠かせないのが、奇跡のようなデビューエピソードだ。奈良県の山あいの村で生まれ育った地元の中学生だった彼女は、映画撮影のロケハンで訪れていた河瀬直美監督の目に留まり、映画『萌の朱雀』の主演に抜擢される。演技経験が全くない少女が放つみずみずしさと野生味は、カンヌ国際映画祭でも高く評価され、世界中にその名を知らしめることとなった。
河瀬直美監督との出会いは、彼女の演技の哲学そのものを形作った。「演じる」のではなく「その場で生きる」という圧倒的なリアリティ。この原点があったからこそ、彼女はその後も嘘のない演技を貫き通すことができたのだ。