紙のチケットを原則廃止し、スマートフォンアプリでのID連携を必須とした判断は、当時のイベント業界にとって極めて大胆な挑戦だった。入場ゲートでの滞留を最小限に抑え、不正転売を物理的に防ぐ狙いは一定の成果を上げた。しかし、現場では予想外のトラブルが多発した。
スマートフォンのバッテリー切れ、通信障害、そしてアプリの操作に不慣れな来場者によるゲート前の長蛇の列。現地スタッフの増員と手動認証ラインの追加という泥縄式の対応を余儀なくされた事実は、完全デジタル化の理想と現場の運用の間に横たわる深い溝を浮き彫りにした。