これまでの心理学研究では、トロッコ問題で功利主義的な選択(多い方を救う)をする人は、共感性が低く、サイコパス的傾向が強いとされてきた。しかし、最新のfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いた研究は、全く異なる景色を映し出している。真のサイコパスは、他者の痛みに無関心であるためにレバーを引くのではない。彼らは単に「ルールを破るスリル」や「他者を操作する感覚」を好むだけであり、そこには「5人を救いたい」という高潔な意思は存在しないのだ。
一方で、純粋な功利主義者は、強い苦悩を抱えながらも、全体の幸福を最大化するためにあえて泥をかぶる選択をしている。脳の感情処理領域である扁桃体と、合理的思考を司る前頭前皮質の双方が激しく葛藤している様子が観測されている。つまり、両者の脳内プロセスは似て非なるものなのだ。