そもそも、なぜ密閉されたクローゼットで白い粉状のカビが発生するのか。その正体の多くは、空気中に常在するコウジカビなどの好乾性真菌類だ。黒カビと異なり湿度が極端に高くなくても活動でき、わずかな栄養源があれば繊維上でコロニーを形成する。
上質な紳士服ほど、カビにとっては極上の栄養源に他ならない。一度でも着用したスーツには、目に見えない皮脂、汗の塩分、フケ、外気のホコリが繊維の隙間にびっしりと付着している。これらが放置され、湿度60%以上、室温20〜25度の環境が揃った瞬間、菌糸は爆発的に増殖を開始する。
特に近年主流の高気密・高断熱住宅では、クローゼット内部に湿気が滞留しやすい。プラスチック製の衣装カバーをかけたまま放置している場合、内部はカビにとって完璧な温室と化す。白カビの出現は、衣類からの「保管環境の限界」を告げるSOSサインである。