1920年代のアメリカ禁酒法時代に生まれた「スピークイージー(隠れ家バー)」の文化が、いま大阪の独自のストリート感と融合して熱狂を生んでいる。看板すら掲げないビルの奥深く、理髪店の鏡やアンティーク時計の裏に潜むエントランス。見つけること自体が最初のエンターテインメントとして設計されているのだ。
薄暗い照明の中に浮かび上がるカウンター席に腰を下ろすと、外の喧騒が嘘のように遮断される。こうしたスピークイージーが提供するのは、秘密を共有する共犯関係のような高揚感だ。隣り合った見知らぬ客同士が、カクテルを片手に自然と微笑みを交わす。空間のギミックだけに頼るのではなく、提供される一杯にも妥協がない。自家製のハーブシロップや和素材を漬け込んだ特製スピリッツが、探求心旺盛な大人の舌を唸らせている。