エボラウイルスの公式な記録は、1976年のヤンブク・カトリック宣教区病院から始まる。ベルギーのアントワープにある熱帯医学研究所に届いた青い魔法瓶。その中に入っていた血液サンプルを分析した若き医師ピーター・ピオットらは、電子顕微鏡を覗き込んで息を呑んだ。そこに映し出されていたのは、細長い紐のような、これまでに見たこともない異形のウイルス粒子だった。
形状は羊飼いの杖のように曲がりくねり、後に「ひも状ウイルス」を意味するフィロウイルス科に分類されることになる。当時、世界保健機関(WHO)の調査チームの一員として現地入りしたピオットらは、注射針の使い回しや遺体の埋葬儀礼が感染爆発の引き金になった事実を突き止めた。だが、最初の患者がいかにしてその病原体を身体に取り込んだのかという「ゼロ号患者の接点」は深い森の霧の中に消えたままだった。