二人の関係を決定的に引き裂いたのは、夫婦間の感情の冷え込みではなく、外部からの陰湿な嫌がらせと巨額の財産被害だった。江利チエミの実の異父姉が、長年にわたり彼女の実印を無断で使用し、多額の借金や抵当権を設定していた事実が発覚する。その被害額は当時の金額で数億円にも上り、自宅までもが差押えの危機に晒された。
高倉健に一切の迷惑をかけたくない、彼の俳優としてのキャリアを守りたい――そう強く願った江利チエミは、一人で全ての負債を背負う覚悟を決める。1971年、苦渋の選択として離婚届が提出された。世間は冷淡な「スター同士のすれ違い離婚」として報じたが、その裏側には、愛する夫を泥沼のスキャンダルから守ろうとした妻の壮絶な自己犠牲があった。