東野ミステリの屋台骨を支えるのが、個性あふれる主人公たちが活躍する三大人気シリーズです。各シリーズの執筆状況と今後の展開について、出版関係者への取材から見えてきた現在地を整理します。
湯川学教授が不可解な現象に挑むガリレオシリーズは、『透明な螺旋』や映画化された『沈黙のパレード』を経て、湯川自身の過去や家族観に深く踏み込むフェーズへと進化しました。関係者の証言によると、短編連作と長編を交互に手掛けてきた東野氏は、物理学的アプローチと現代社会の先端科学(AIやバイオテクノロジーなど)を掛け合わせた新たなプロットを温めているとされ、次なる長編への期待が最高潮に達しています。
新田浩介と山岸尚美のバディがホテルを舞台に火花を散らすマスカレードシリーズは、『マスカレード・ゲーム』で一つの大きな節目を迎えました。ホテルという「仮面を被る人々が集う場所」の舞台設定を活かしつつ、コンシェルジュと刑事という異なるプロフェッショナリズムの衝突と共鳴を描く本シリーズは、スピンオフ短編を含めた次なる一手への注目が集まります。
日本橋署から練馬署、そして警視庁捜査一課へと舞台を変えながら人間の哀哀を描く加賀恭一郎シリーズは、『祈りの幕が下りる時』で完結したかに見えた物語が『あなたが誰かを殺した』で見事な復活を遂げました。人情味あふれる捜査スタイルと、相手の嘘の裏にある「守りたい秘密」を見抜く加賀の眼力は健在であり、読者の間では「東野作品で最も人間ドラマに泣けるシリーズ」として不動の地位を保っています。