彼の物語を語る上で避けて通れないのが、第七師団を率いる鶴見中尉への絶対的な忠誠心だ。最初はまるで神を崇めるかのような盲目的な信奉だった。しかし、真実を知り、欺瞞に気づいた瞬間から、彼の本当の戦いが始まる。信じていた世界が崩壊する恐怖は、想像を絶するものだったはずだ。
そこからの脱却プロセスが実に見事だ。彼は鶴見を否定し去るのではなく、自分自身の足で立ち、自分の正義を貫く道を選んだ。この「親殺し」にも似た精神的自立のプロセスは、現代人が親や社会の既存の価値観から脱却し、自己を確立していく過程と見事にシンクロする。だからこそ、私たちは彼の背中に自分自身を投影してしまうのだ。