かつて1998年長野五輪の舞台となった日本唯一のボブスレー・リュージュパーク「スパイラル」が、財政難を理由に製氷を休止したのは2018年のことだ。国内で氷上練習ができる環境を完全に失った日本代表チームは、事実上の「漂流」を余儀なくされた。練習の場を求めて海外を転々とする日々。遠征費用はかさみ、選手たちの負担は限界に達していた。
しかし、この逆境が彼らを強くした。氷の上を滑れないのであれば、陸上でできる極限のトレーニングを突き詰めるしかない。選手たちは夏の間、傾斜をつけた特製のウッドデッキやアスファルトの上で、重さ数百キロのモックアップ(模擬ソリ)を押し続けた。この地道な「陸上での狂気」とも言える反復練習が、世界屈指の爆発的なプッシュ力を生む原動力となったのだ。