そもそも、なぜ10円玉の縁にギザギザが刻まれるようになったのでしょうか。その理由は、戦後日本の通貨制度と金属価値の変遷にあります。
昭和26年に現行デザインの平等院鳳凰堂を描いた10円青銅貨が登場した当時、10円は日常で流通する硬貨の中で最高額面の硬貨でした。貨幣史において、金貨や銀貨などの高額硬貨には縁を削り取って地金を盗取する不正を防ぐ目的や、視覚障害者が手触りで硬貨を識別できるように「ギザ」を施す国際的慣習が存在していました。当時の造幣技術の粋を集め、最高額面硬貨としての威厳を持たせるために刻まれたのが、縁の132本の溝だったのです。
しかし、このギザはわずか7年で姿を消すことになります。転換点となったのは昭和32年の100円銀貨(鳳凰100円)の登場です。新しく発行された最高額面の100円硬貨にもギザが刻まれていたため、「手探りで10円玉と100円銀貨の区別がつかない」「自動販売機や両替機での誤作動を招く」といった苦情や混乱が相次ぎました。
その結果、政府は昭和34年(1959年)から10円玉の縁を平滑(ギザなし)に設計変更しました。この歴史的経緯によって、昭和26年〜33年の足かけ8年間(実質製造7年間)に作られた10円青銅貨だけが「ギザ10」という孤高の存在として後世に残されることになったのです。