初夏や秋口に川沿いや住宅街の窓際を埋め尽くす小さな飛翔昆虫。その代表格がハエ目ユスリカ科に属する「ユスリカ」です。外見は一般的なカ(イエカやヒトスジシマカなど)に酷似していますが、生物分類上は全く異なる系統に属しています。
ユスリカの幼虫は一般に「アカムシ(赤虫)」と呼ばれ、川底や側溝、用水路の泥(ヘドロ)の中に生息しています。泥中の有機物を食べて水を浄化する生態系上の益虫としての側面を持つ一方、水温が15℃〜25℃に達すると一斉に蛹化し、成虫となって水面から飛び立ちます。近年の都市部における気温上昇や暖冬傾向、局所的な集中豪雨後のヘドロ堆積などが複合的に絡み合い、特定の水系エリアで爆発的な発生を引き起こす要因となっています。
成虫の寿命はわずか数日から1週間程度しかありません。口器が退化しているため餌を食べることもなく、成虫期間の唯一の目的は「交尾と産卵」に特化しています。寿命が短いがゆえに、同時期に何万・何十万匹という個体が一斉に羽化して群れを成す戦略をとっており、これが人間環境における「大量発生」として観測される根本的な構造です。