音楽的な仕掛けも秀逸だ。昭和の歌謡曲を彷彿とさせる哀愁漂うヨナ抜き音階(日本特有の音階)をベースにしながらも、バックトラックには最先端のローファイ・ヒップホップやトラップのビートが刻まれている。この「新旧のハイブリッド」が、10代から40代まで幅広い層にアピールする要因となっている。
「単なる懐古趣味ではない」と、ある音楽ジャーナリストは指摘する。「耳馴染みの良いメロディラインの裏で、極限まで無駄を削ぎ落としたミニマルなアレンジが施されている。これがスマートフォンのスピーカーで聴いた際、ボーカルの『声の近さ』を際立たせる効果を生んでいる」という。聴き手の耳元で直接囁かれているかのような親密さが、リスナーの孤独感に寄り添う。