逮捕の瞬間に生じた最大の激震は、完成間近、あるいは公開を控えていた出演映画の処遇だった。なかでも草彅剛主演の『台風家族』は、一時は完全なお蔵入りが危ぶまれる事態に直面した。製作委員会は苦渋の決断を迫られたが、フィルムの再編集とファンからの強い要望を受け、異例の延期上映へと踏み切る。スタッフの血と汗を守るためのギリギリの妥協点だった。
対照的に、残酷な運命を辿ったのが林遣都とのダブル主演作『善悪の屑』だ。復讐代行人を描くクライムサスペンスという作品の性質上、主演俳優が性犯罪で実刑を受けるという現実との乖離を埋めることは不可能だった。製作サイドは公開中止を即断。莫大な製作費は宙に浮き、関係者への損害賠償を巡る交渉は泥沼を極めた。
日本映画界全体が、キャスティングに伴うリスク管理とコンプライアンスの脆弱さをまざまざと見せつけられた瞬間だった。