鈴木清順監督と組み、キネマ旬報ベスト・テンで1位に輝いた『ツィゴイネルワイゼン』は、彼のアートハウス映画における金字塔である。生と死の境界線が曖昧になる幻想的な世界観のなかで、自由奔放かつどこか怪しげな居候・中砂役を怪演。その圧倒的な存在感は作品の骨格を支え、観客を迷宮のような物語へと引きずり込んだ。
この作品が見せた映像美と文学的な深みは、日本映画製作者連盟の歴史においても異彩を放ち、国内外で極めて高い評価を獲得した。論理や理屈を超えた場所に存在する人間の業を、ただそこに佇むだけで表現してしまう稀有な才気。それはアートハウス映画という枠を超えて、観る者の無意識に深く侵入する毒のような魅力を放っていた。