子どもの頃は環境の影響が大きい。親が与える本、通わせる塾、日々の会話。これらが知能の発達を左右するように見える。しかし、行動遺伝学の双生児研究が明らかにしたのは、年齢を重ねて自立するにつれて遺伝の影響(遺伝率)が大きくなるという意外な事実だ。児童期には30%程度だった知能の遺伝率は、成人期には70%から80%にまで達する。
なぜか。大人になると、人は自分の遺伝的素質に合った環境を自ら選択し始めるからだ。本を読むのが得意な遺伝的傾向を持つ人は図書館へ行き、活発な人は外へ出る。結果として、遺伝的素質が環境によってさらに増幅される。私たちは歳をとるほど、自らの遺伝子が求める環境へと引き寄せられていくのだ。