スーツのアウトレット工場や直営倉庫セールを訪れた人が一様に驚くのは、イタリア製高級服地「ロロ・ピアーナ」や「カノニコ」、あるいは国内名門毛織のタグが付いたスーツが、1万円〜3万円台という信じがたい価格で販売されている点です。この破格のプライシングが成立する背景には、アパレル業界特有の多重マージン構造と製造現場の実情があります。
一般的なアパレル流通では、生地企画から紡績、縫製工場、商社、アパレルメーカー、百貨店や専門店の店頭に至るまでに、宣伝広告費や店舗テナント料、中間利益が幾重にも上乗せされます。その結果、工場出荷原価の約3.5倍〜5倍が最終的な店頭上代(定価)として設定されるのが通例です。工場直営店や直売所では、これらの中間マージンが完全に削ぎ落とされます。
さらに、ネット上で囁かれる「スーツアウトレットの訳ありの真相」には、品質そのものの瑕疵(欠陥)ではない、製造現場ならではの明確な理由が存在します。
縫製工場では、大手ブランドやテーラーから数百着単位のオーダーを受ける際、予備として生地(反物)を多めに確保します。仕立て上がった後に残った数メートル〜十数メートルの上質な余剰生地は、通常ラインには乗せられないものの、極めて高い品質を保っています。工場はこれらを自社の閑散期に縫製し、自前の直売所やセールで現金化しているのです。
また、ごくわずかな糸の飛び出しやミリ単位の織りムラ(検品基準が極めて厳しい日本市場ゆえに弾かれた微細なB品)、展示会用サンプル品、オーダーキャンセル品などが集約されます。着用上は全く問題がないにもかかわらず、正規ルートで販売できなくなった高スペック品が、工場直売という形で還元されています。