物語の舞台となったのは、兵庫県南西部に位置する地方公立病院、赤穂市民病院である。2019年から2026年にかけてのわずか1年あまりの間に、同院の脳神経外科で特定の一人の医師が関与した手術において、8件もの重大な医療事故が連続して発生していた。
腰椎のドリル手術中に神経を誤って切断し患者に重度の下半身麻痺を負わせた事案や、頸動脈内膜剥離術後の重篤な後遺障害、さらに難易度の高いカテーテル治療における失技など、信じがたいインシデントが立て続けに起きていた。常軌を逸した頻度である。にもかかわらず、病院上層部は執刀禁止処分を科すことを先延ばしにし、外部への公表も長期間にわたって抑え込もうとした。組織的な隠蔽体質が被害をここまで拡大させた最大の要因であったことは疑いようがない。