ハエ目ハエ亜目トブノシ科やアブ科(Tabanidae)に属するアブは、国内だけでも数百種が確認されている。一般に行楽地で遭遇する代表格がウシアブやイヨシロオビアブだ。体長2〜5ミリメートルほどで草むらに潜むブユ(ブヨ)と比べ、アブ科の成虫は体長15〜30ミリメートルと遥かに大きく、ブーンという羽音で存在感を放つ。
吸血を行うのは、産卵のための栄養源を必要とするメスに限られる。彼女たちの感知能力は極めて高く、動物が排出する二酸化炭素、体温、皮膚の水分、さらには黒や紺といった濃い色の動体に吸い寄せられる習性を備える。
車の排気ガスや停止直後のエンジン熱にも敏感に反応するため、ドライブコースの駐車場でドアを開けた瞬間に車内へ雪崩れ込んでくるケースも珍しくない。高速で飛翔しながら標的を追尾し、狙いを定めた部位へ一直線に襲いかかる攻撃性は、他の吸血昆虫の追随を許さない。