処刑場に消えゆく間際、五右衛門が詠んだとされる辞世の句は、日本史上でも屈指の知名度を誇ります。
「石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ」
この句の現代語訳は、「たとえ石川の河原や全国の海岸にある無数の砂粒がすべてなくなったとしても、この世から盗人の種が消え失せることは決してない」という意味になります。一見すると自らの悪行を居直った歌のようにも読めますが、深層には天下人・豊臣秀吉に対する痛烈な当てつけが込められていると解釈されます。
主君である織田信長の死後に権力を横取りし、日本全土と民の財を巻き上げて天下人へとのし上がった秀吉こそが「最大の泥棒」ではないか――。自らは小悪党として極刑に処されながらも、権力者の欺瞞を鋭く突いたこの歌は、抑圧された庶民の留飲を下げ、後世に語り継がれる決定打となりました。