1986年1月28日、日本テレビ系の情報バラエティ番組『どうぞ!熱中時代』の取材班とともに、松島トモ子さんはケニアのコラ国立保護区を訪れていました。目的は、名作映画『野生のエルザ』のモデルとして世界的に知られる野生動物保護活動家、ジョージ・アダムソン氏の活動を取材することでした。
現場では、アダムソン氏が保護し野生に返す訓練を行っていた雌ライオン(愛称:メグ)との接触シーンが計画されていました。「人間によく慣れている」「おとなしい」と説明されていたにもかかわらず、なぜライオンは松島さんに牙を剥いたのでしょうか。その背景には、複数の決定的な要因が重なり合っていました。
第一の要因は、ライオンが持つ「捕食本能のスイッチ」が入ってしまった点です。松島さんは小柄な体格であり、アダムソン氏の指示に従って歩いていたものの、一瞬背中を向けたり、視線を逸らしたりした動作が、野生肉食獣にとって「格好の獲物」と認識される引き金となりました。アダムソン氏が育てていたとはいえ、彼らは完全に飼いならされたペットではなく、狩猟本能を色濃く残した猛獣だったのです。
第二の要因は、番組制作現場における「野生動物への過信と油断」です。アダムソン氏のカリスマ性と「ライオンと心を通わせる男」という神話に撮影スタッフが過度に依存し、防護柵や緊急時の麻酔銃といった物理的な安全対策を講じていませんでした。ライオンが突如として背後から飛びかかり、松島さんの首や肩に噛みついた瞬間、現場はパニックに陥り、アダムソン氏が持っていた杖でライオンを激しく殴りつけて引き離すまで、松島さんは牙に捕らわれたままでした。