映画『二百三高地』を手掛けた名匠・舛田利雄監督とメガホンをとった映画会社・東映の狙いは、単なる戦勝讃歌を作ることではなかった。日露戦争という国家の存亡を賭けた戦火の中で、名もなき兵士たちがどのように散っていったのか。その人間ドラマを圧倒的なリアリティで描き出すことが命題だった。
舛田利雄監督は、従来の威勢の良い軍歌風の楽曲を一切拒否した。戦場の残虐さと人間の儚さを表現できる存在として白羽の矢を立てたのが、当時叙情的な楽曲で若者の支持を集めていたさだまさしだった。制作陣の期待に応えるべく、万葉集の防人の歌からインスピレーションを得て紡がれたメロディは、映画業界の常識を打ち破る重厚な鎮魂歌として誕生したのだった。