夏八木勲を襲ったのは、沈黙の臓器と呼ばれる膵臓(すいぞう)のがんだった。診断が下されたのは亡くなる約半年前の2012年秋。すでに病状は進行していたが、彼は周囲にその事実をほとんど明かさなかった。仕事をキャンセルすれば、作品の制作が止まってしまう。何より、同情の目で見られることを嫌った。
痩せ細っていく身体に鞭打ち、彼は過酷なロケ現場に立ち続けた。痛み止めを服用しながら演じる姿は、共演者やスタッフの目には「少し痩せたが、相変わらず渋いプロフェッショナル」としか映っていなかったという。死の直前まで続いたその執念は、常人の域を超えていた。