この大きな潮流の源流をたどると、間違いなくボカロP文化に行き着く。音声合成ソフトを駆使して自作の楽曲を配信していたクリエイターたちが、自ら歌い手として、あるいは気鋭のボーカリストをフィーチャーしてメインストリームへと進出してきた歴史があるからだ。複雑な転調や超高速のメロディラインといったボカロ特有の楽曲構成は、現在のチャートを彩る音楽のスタンダードとなった。
この変化は、伝統的な音楽産業にも大きな衝撃を与えている。かつてレコード会社が主導で行っていたスカウトや育成、プロモーションのプロセスは解体され、ネット上で既に独自の熱量を持ったリスナー層を確保している覆面アーティストを獲得する争奪戦へと変貌した。既存のJ-POPの枠組みは、ボカロカルチャー由来のDIY精神とデジタルネイティブな感性によって、内側から完全に塗り替えられたのだ。