名選手が必ずしも名コーチになるとは限らない。その最大の理由は「自分ができたことを選手にも求めてしまう」という罠に陥るからだ。しかし、彼はその罠とは無縁の場所にいる。彼のコーチングの最大の特徴は「答えをすぐに教えない」ことだ。
「今のボール、自分ではどう感じた?」——マウンドやブルペンで、彼は選手に問いかける。選手自身に自分の感覚を言葉にさせ、課題を抽出させるのだ。一方的な指示ではなく、対話を通じて選手の中に「気づき」を生み出す。この粘り強いアプローチが、マウンド上でパニックに陥らない、強いメンタルと自己修正能力を持った投手を育て上げている。