ソーシャルメディア上では「アメリカの女子選手はジャンプの安定感に欠ける」「ロシアや日本に比べて若手の台頭が遅い」といった言説が散見されますが、これは現場の実態を見誤った典型的な誤解です。
かつてアメリカのフィギュア界にも、昭和から平成初期の芸能界やスポーツ界に見られたような「ステージママ文化」や、保護者・コーチによる過度な介入が存在していました。1990年代のトーニャ・ハーディング事件に象徴されるような、勝敗至上主義による歪みが生じた時代もありました。
しかし近年のアメリカでは、全米体育協会(SafeSport)による指導者監視体制の厳格化が進み、早期専門化(幼少期からの過度な単一競技集中)による怪我や精神的疲弊を防ぐガイドラインが徹底されています。その結果、10代前半で無理に4回転ジャンプを跳ばせるのではなく、骨格が完成した10代後半から20代にかけて息の長い競技生活を送れる選手が増加しました。
アメリカフィギュア女子歴代メダリストの歴史を振り返っても、トーニャ・ハーディング、キミー・マイズナー、長洲未来、アリサ・リウ、アンバー・グレンと、長年にわたりトリプルアクセル成功者を継続して輩出し続けている国は日本とアメリカ以外にほとんどありません。力任せのジャンプではなく、長期的なフィジカルビルディングに基づく高難度技術の習得が進んでいる点こそ、現在の米国女子の真の強みです。