『サイコブレイク』のシナリオが放つ圧倒的な緊迫感は、キャラクター各自が背負う「罪」や「トラウマ」がSTEMという精神増幅器の中で克明に暴かれる点にあります。市警の刑事たちがなぜ狂気の世界に引きずり込まれなければならなかったのか、その根底には冷酷な多国籍コングロマリット「メビウス」の存在がありました。
主人公セバスチャン・カステヤノスは、かつてクリムゾン市警屈指のエリート捜査官でした。しかし、最愛の娘リリーを不審な自宅火災で失い、その死の真相を執念で追っていた妻マイラまでもが突如として失踪。現実を受け止めきれずアルコール依存に陥り、精神の崩壊寸前で事件の現場へと向かうことになります。だが、この火災も失踪もすべて、STEMの被験者として子供を求めていたメビウスによる狂言工作でした。
一方、新人刑事として配属されたジュリ・キッドマン(キッド)の正体は、メビウスの命令を受けて警察内部に潜入した工作員です。宗教狂信的な家庭に生まれ、ネグレクトと家出の果てに居場所を失っていた彼女は、メビウスの幹部アドミニストレイターに見出され組織に忠誠を誓っていました。キッドに課せられた極秘任務は、STEMの適合者である「レスリー・ウィザースの確保と連れ戻し」。彼女自身も胸に組織のインプラントを埋め込まれ、逆らえば即座に脳を破壊される使い捨ての駒に過ぎなかったのです。
そして物語のトリガーを引いた裏切り者が、精神科医マルセロ・ヒメネスです。彼は莫大な資金提供と引き換えにルヴィクの研究をメビウスへ横流しし、自らの名声のために論文を剽窃。ルヴィクの利用価値がなくなると、組織と共に彼を拘束して生きたまま脳を摘出しました。彼らの底知れぬエゴと欺瞞こそが、復讐に燃える怪物を生み出す元凶となったのです。