しかし、世間の悪名による消費が一段落すると、佐川の生活は急激に暗転します。親族の死去や資産の枯渇により経済的に困窮し、名前を変えてアパートを借りるも、素性が発覚するたびに退去を迫られるなど孤立を深めていきました。
2010年代に入ると脳梗塞を発症して倒れ、重度の後遺症により車椅子生活を余儀なくされます。自力での生活が困難となった佐川を最後まで世話し続けたのが、実弟の佐川純氏でした。純氏は兄の介護を担いながら、加害者家族として背負い続けた壮絶な苦悩を自著などで明かしています。
2017年には、フランスの映画製作者が佐川兄弟に密着したドキュメンタリー映画『カニバ(Caniba)』が公開され、ヴェネツィア国際映画祭で受賞するなど、再び国際的な関心を集めました。画面に映し出されたのは、かつての雄弁さを失い、老いと病魔に蝕まれながらなお自らの業と向き合う老人の姿でした。
そして2026年11月24日、佐川一政は東京都内の病院で誤嚥性肺炎のため息を引き取りました。73歳でした。葬儀は弟をはじめとする近親者のみで密かに執り行われ、世界を震撼させた殺人犯の生涯は静かに幕を閉じました。