生パスタのレシピを見る際、「全卵を使うレシピ」と「水と塩のみ(あるいはオリーブオイル)で作るレシピ」の2系統が存在することに気づきます。これは単なる好みの問題ではなく、イタリア北部の伝統(エミリア=ロマーニャ州を中心とした卵入りリッチパスタ)と、イタリア南部の伝統(プーリア州などの水だけで練るセモリナパスタ)という地域的・科学的な差異に基づいています。
卵入りの生パスタ(パスタ・アッラオヴォ)は、卵黄に含まれる脂質とレシチン(乳化剤の働き)によって生地が滑らかになり、芳醇なコクと美しい黄金色に仕上がります。さらに卵白のタンパク質が熱凝固することで、噛み切る際に心地よい歯切れの良さが生まれます。濃厚なクリームソースや肉のラグーに合わせるなら、間違いなく卵入りが適しています。
一方、卵なしの生パスタは、セモリナ粉本来の穀物の甘みと風味がストレートに引き立ち、表面がざらざらとした素朴な質感(オレッキエッテやカヴァテッリなど)に仕上がります。こちらはトマトソースやオイルベース、魚介類のソースと抜群の相性を誇ります。水分の黄金比率は粉の総重量に対して48〜52%(全卵M玉2個=約100gで粉200gに対してジャスト50%)を目安にするとベタつかず扱いやすい生地になります。