80代後半を迎えてもなお、演出家やプロデューサーからオファーが絶えない理由は、演技力の高さだけにとどまりません。現場スタッフや共演者への配慮、そして現場の空気を瞬時に和ませる「受けの美学」にあります。
制作現場に携わるスタッフの証言によると、伊東四朗は現場入りする際、誰に対しても腰が低く、若手スタッフの名前を積極的に覚えて挨拶を交わすといいます。長時間の撮影現場でも一切愚痴をこぼさず、周囲が緊張しないよう率先して冗談を飛ばし、現場の士気を高めます。
『伊東家の食卓』で見せたように、自らが前に出て威張るのではなく、周囲の個性やアイデアを最大限に引き立てる立ち居振る舞いこそが、長きにわたり幅広い世代から慕われ続ける本質的な要因です。