なぜ、彼の描く世界はこれほどまでに読者の心を掴んで離さないのか。伝説のギャグ漫画『食べれません』と作者・風間やんわりの魅力に迫るうえで外せないのが、徹底した日常の「ズレ」を描く観察眼だ。奇抜なキャラクターが登場するわけではない。どこにでもいるおじさんやサラリーマン、動物たちが、ほんの少し歪んだ論理で会話を繰り広げる。その絶妙な間とナンセンスなオチが、中毒性の高い笑いを生み出している。
当時の関係者や担当編集者が明かす未公開エピソードも味わい深い。締切直前まで麻雀や酒に興じながらも、机に向かうとわずか数十分で爆笑必至のネタを書き上げたという。泥縄に見えて、その実、頭の中には緻密なコンテが完成していた。現場の緊迫感とは裏腹に、生み出される原稿はどこまでも軽やか。過酷な出版業界の現場で磨かれたタフさと、生まれ持った天性の感覚が同居していたのだ。