歌舞伎界を支えた名脇役・尾上松助の知られざる足跡と松也の魂

歌舞伎界を支えた名脇役・尾上松助の知られざる足跡と松也の魂

歌舞伎界を支えた名脇役・尾上松助の知られざる足跡と松也の魂の見逃せないポイントを一挙に解説しました。

幕が開き、花道から登場するだけで劇場の空気が一段低く沈み込む。歌舞伎座の檜舞台において、六代目松助が見せた悪役や老爺、あるいは世話物の市井の人々の佇まいには、嘘のない人間の情念が滲んでいた。音羽屋の屋号を掲げ、当代の尾上菊五郎率いる菊五郎劇団の屋台骨として、彼はまさに舞台に不可欠な「鍵」であり続けた。

主役を際立たせるための間合い、セリフを投げかける角度、微細な衣擦れの音に至るまで、その芝居には計算し尽くされた美学があった。単に主役を引き立てるだけではない。松助が演じる敵役が冷徹であればあるほど、善人の悲哀が際立ち、ドラマの強度が跳ね上がる。歌舞伎という様式美の世界で、生々しいリアリティを吹き込む職人技は、観客のみならず同世代の役者たちからも絶大な敬意を集めていた。

中村 さくら
Author

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。