すべては、岩手県の豊かな自然に抱かれた地から始まった。主役の名は「かご猫シロ」。どんな大きさのかごにも吸い込まれるように体を収め、頭の上にミカンやキャベツ、野の花を載せられても微動だにせず、のんびりと目を細める。その泰然自若とした佇まいは、観る者の肩の力を瞬時に抜いてしまう不思議な魔力を持っていた。
飼い主が日々の記録として立ち上げたブログは、瞬く間に口コミで広まり、出版界の目にとまることになる。宝島社から発売された写真集『かご猫』は、異例のベストセラーを記録。書店には特設コーナーが作られ、愛猫家のみならず普段ペットに関心を持たない層までがその愛らしい姿に手を伸ばした。都会の喧騒に生きる現代人にとって、シロが見せる四季折々の田舎暮らしは、失われつつある原風景そのものだったのだ。