漫画の実写化において、最も再現が難しいとされるのが内面的なコンプレックスの描写だ。何でも器用にこなす秀才でありながら、最も欲しいものだけが手に入らない真島太一。この難役を引き受けた野村周平は、持ち前のワイルドなパブリックイメージを封印し、徹底的に「敗北を知る男」の眼差しを作り上げた。
畳の上の格闘技と呼ばれる競技かるた。クランクイン前からの猛特訓によって、彼の指先や膝には幾重もの擦り傷が刻まれていた。札を払う刹那のスピードだけでなく、息を呑む静寂の中で見せる瞳の揺らぎ。肉体的な負荷を恐れずに挑んだからこそ、太一の抱く劣等感と純粋な恋心が圧倒的な説得力を持って観客に突き刺さったのだ。