画数の多さで世界的に有名なのは、中国の「ビャンビャン麺」の「ビャン(57画)」だろう。穴、言、糸、馬、長、月、リ、心……文字の中にいくつものパーツがこれでもかと詰め込まれた構造は、一度見たら忘れられない。
しかし、東アジアの漢字文化圏には、ビャンをも凌ぐ怪物がまだまだ隠れている。たとえば、道教の符籙(お札)に使われた呪術的な文字や、皇帝の権威を示すために作られた則天文字の異体字だ。
これらは日常のコミュニケーションのためのツールではない。権力、祈り、あるいは部外者を排除するための秘密の暗号として機能していた。文字を複雑にすること自体が、聖なる力や特権の象徴だったのだ。