この重厚な伝統文化がポップカルチャーの真ん中に躍り出た最大の転換点は、テレビ番組『爆笑レッドカーペット』だった。吉本興業に所属するお笑い芸人、天津木村が見せた「エロ詩吟」のパフォーマンスは、日本中に爆発的な笑いと強烈なインパクトを与えた。「あると思います」というフレーズとともに、本格的な声量で下ネタを堂々と吟じ上げるギャップは、瞬く間に茶の間の心を掴んだ。
荘厳な詩吟の節回しと身近なエロティシズムの融合という斬新な切り口は、芸能界においても大きな話題を呼んだ。このムーブメントによって、それまで若者にとって縁遠い存在だった「吟じる」という行為が一気に親しみやすいキーワードへと変貌を遂げたのである。形式に固執せず、日常の感情を声に乗せるという本質的な面白さを、彼のお笑いセンスが図らずも証明した形となった。