博多から長崎までの完全直通を阻んでいる最大の要因が、西九州新幹線未着工区間現在の焦点となっている新鳥栖〜武雄温泉間(約51km)の整備方針です。この区間を新幹線規格(フル規格)で整備するか否かをめぐり、佐賀県と国土交通省・JR九州の間で意見の隔たりが続いています。
佐賀県協議ルート問題の真相を紐解くと、佐賀県側が抱える3つの構造的な懸念が浮かび上がります。
第一に巨額の地元財政負担です。全線フル規格で建設する場合、佐賀県の費用負担は600億円〜800億円規模に上ると試算されています。第二に並行在来線の経営分離リスクです。新幹線開業に伴いJR長崎本線(鳥栖〜江北間など)が経営分離されれば、普通列車の減便や運賃値上げが地域住民の通勤・通学の足を直撃しかねません。そして第三に、佐賀県民は既存の在来線特急で佐賀駅から博多駅まで約35〜40分でアクセスできており、「多額の税金を投じても時間短縮効果が約15〜20分程度に留まる」という費用対効果の低さが挙げられます。
国や長崎県が新鳥栖武雄温泉フル規格化を強く求める一方で、佐賀県は「もともとフル規格を合意した経緯はない」という立場を一貫して保持しており、佐賀駅を通るルートや佐賀空港を経由する南回りルートなど、ルート案の議論も膠着状態が続いています。